Q:賃金制度「年齢給」などに変更すれば、共感を示す人もいる反面、傷つく人も出てくると思いませんか?

(「労働の対価でない賃金」的な考え方では) そうかもしれませんが、現行の制度でも傷ついている人がいると思います。

現行の制度が本人のパフォーマンスに基づく目標管理制度(MBO)だと仮定して、いわゆるローパフォーマーと呼ばれるような下位評価をもらっている人や、本人評価と他者評価のギャップが大きい人は、同じく傷ついていると思います。人が幸せに働けるかどうかは、制度だけの問題でもないように思います。

Q:賃金制度を変更して、「労働」と「賃金」とを実質的に切り離せば、必ず混乱は起きます。また、痛みを抱える人も出てくると思うのですが?

(「労働の対価でない賃金」的な考え方では) 一般的には、例えば、企業が人事制度をジョブ型に変更するなどといった際には、1年~2年前から、社員説明会を数回開くなどして、制度改定の目的や背景、そして今後の運用について根気よく説明を行います。

今回の場合も同様です。不利益変更に当たらないのならば、その旨は、働くメンバーにはきちんと説明して一定の納得を得なければなりません。そうやっても多少の混乱は起きるのが通常です。痛みについては、正確な情報開示等、前もってケアすることで、軽減も可能です。

もちろん、もっと稼ぎたいと思う人などは、今後の展開が分かった上で、自分で転職先を探してくるケースも出てくるでしょう。それを止めるといったことは想定していません。

Q:評価制度がなくなった場合、社員は自分の仕事が会社からどのように評価されているのか把握しづらくなります。それによって、何か問題は生じないでしょうか?

(「労働の対価でない賃金」的な考え方では) 評価制度がなくなると、確かに社員は自分の仕事が会社からどのように見られているのか分かりにくくなる可能性があります。特に、会社からの価値付けが可視化されなくなる点を不安に感じる人もいるでしょう。

制度上の評価がなくても、自分の仕事の価値や成果を客観的に把握する方法はあります。例えば、メンバー間の相互フィードバックを活用することで、多角的な視点から自分の強みや改善点を知ることができます。

また、管理職の中には評価制度がなくなったことでストレス要因が減ったという人もおり、人に点数をつけること自体に抵抗感を持つ人も少なくありません。評価という形式にこだわらない方が、より率直で有益なコミュニケーションが生まれる可能性があります。

Q:評価制度がなくなることで、モチベーションの維持が難しくなったり、給与の決め方が分からず不安になったりしないでしょうか?

(「労働の対価でない賃金」的な考え方では) 「労働の対価でない賃金」の考え方では、評価と賃金との切り離しを提案しています。これが実現することで、評価結果によって給与が決まる仕組みから解放されることになります。

モチベーションに関しては、評価制度が必ずしも全員のやる気を高めるわけではありません。確かに、高評価を得る社員にとってはモチベーション向上につながることがありますが、それ以外の社員にとっては評価が不満要因となり、逆に意欲を低下させることになりかねません。特に、将来の昇格がかなりの確率で期待できるハイパフォーマーを除くと、多くの社員にとって、評価制度がモチベーションの源泉となることは少ないでしょう。

むしろ、評価制度という外発的な動機付けから解放されることで、仕事の本質的な面白さや、チームでの達成感といった内発的なモチベーションに目を向けやすくなります。このような内発的動機付けは、長期的に見ても持続可能で健全な職場環境の構築につながることが想定できます。

給与面の不安については、透明性のある賃金制度を整えることで、かなりの部分を解消が可能です。そのためには、賃金の決定プロセスを分かりやすく開示し、社員に対して丁寧に説明することが必要になります。評価制度と切り離された賃金体系が明確に示され、社員に理解されれば、予測可能性が高まり、不安要素はむしろ減少すると考えられます。

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